うたた ka-gu’s diary

障がいをお持ちの方の、生活と余暇支援を行っている・NPO法人うたたのブログです

流しでお薄と、【『タスティン入門』解題】木部則雄


 集団指導までに、現況報告をほぼ作成できる状態にしていましたが、様式が変わりますって、前日に掲載されていました.......。常勤換算以外はそんなに変わっていませんでしたが、逐一見比べるのも面倒なので、一通りダウンロードしました。
 今日は夜勤ですが、朝から事務所に行き、書類を沢山運んできて、バチバチ打ち込みました(笑)
ばたばたしていたので、少し落ち着こうと、流しでお薄を点てました。そのまま流しで立っていただきましたら、少し落ち着き事務仕事に戻れました。

 もうすぐ夜勤です......。

『タスティン入門』はこれで終わりにしますが、基礎的な大事なことが沢山書かれていました。
タスティンはまだ続きますので、次回からは、新しい『自閉症と小児精神病』からのアップになります。




『タスティン入門』解題木部 則雄
Ⅱ タスティンの精神分析理論の背景
1)メラニー・クライン
クラインの発達論は投影同一化と摂取同一化のやり取りの中で対象関係の変遷――PSポジションからDポジション――が起きるものである。原則的に、母子には融合状態の一体化は存在せずに、母子が早期から分離した存在だと考えている。これは後の統合失調症の理解には必須の概念となり、精神病患者の治療の基本となった。しかし、タスティンにとって、初めてのケースであるジョンのようなカプセル化された自閉症児の分離への抵抗は、一体化という概念なくしては解決のつかないものであった。この疑問が、タスティンが決してクライン派の理論の枠内に安住しなかった理由の一つである。しかし、技法的にはクラインの確立した児童分析技法に準拠し、それを応用することでタスティン自身の技法を確立した。


2)ウィルフレッド・ビオン
〜ビオンの「夢幻」を応用し、タスティンは新生児の正常な心は、母親のいわば「子宮」の中で保護されていると考えた。この早期子宮状態は、逆に乳児側からみた場合、子宮から自分の身体が分離したという実感が感じられない。さらに、ビオンの誕生の亀裂(caesura)にもかかわらず、子宮内に留まっているという感覚は、「水の媒体」によって外界との接触の執行猶予を与える。こうした子宮内体験があまりに早期に障がいを受けると、正常な心理的誕生が損なわれる結果になる。心理的破局も傷ついた心的誕生も、前言語、前概念的なものであり、コミュニケーションは比喩や類推に頼ることになり、必然的に本来の体験を歪める。さらにタスティンは、原初的統合について言及し、ここではコンテイナー(♀)とコンテインド(♂)の概念を応用し、最早期の結合が硬い感覚と柔らかい感覚との間で起こるということであった。柔らかい感覚は「受け入れること」と包容性に結びつき、硬い感覚は「侵入すること」「突くこと」に結びついている。当然のことながら、これは男性性、女性性に関連している。母子関係において、「硬い」「侵入する」乳首と舌が、「柔らかい」「受け入れる」口と乳房とともに体験された時、男性性と女性性の要素のカップルが成立する。乳幼児の最早期の段階では、この硬い乳首が柔らかい口に侵入する時に、エクスタシーを感じ、ひとつである状態という至高体験に至る。しかし、母親自身がこのエクスタシー体験を受容し、それに耐えることができるかどうかが重要である。もし母親がその興奮状態にある乳児に耐えることができなければ、乳児は早期に母と自分自身がふたつの状態にあることを背負わなければならない。その後、これは自分の外部からもたらされたことをにんしきするが、早過ぎる分離に対して投影や模倣や同一化が作動する。投影にとって不快な「硬さ」は外部に排除され、「柔らかさ」は自分であり、「硬さ」は自分でないものになる。しかし、この柔らかい自分はとても脆弱であり、もし母親の保護が妨げられれば、ビオンの「言いようのない恐怖」に晒される。この原初的統合の過程に支障があれば、通常の投影等の原始的防衛の作動する基盤が形成されることはなく、心理的誕生は達成されない。タスティンは、自閉症を考えるにあたり、クラインの象徴形成の理論だけでは不充分であると考え、ビオンから学んだ精神病のプロセスと前心的状態である象徴形成以前の非象徴領域のアイデアを取り入れた。




3)エスター・ビッグとドナルド・メルツァー
〜タスティンは、ものも言わない最早期の乳児の心のありようを読み取る卓越したビッグの能力に感銘した。ビッグは自らの創案した乳幼児観察で、細分化し解体に向かう傾向のある自我を包みこむ母親の機能から獲得される皮膚機能を重視した。これはウィニコットのホールディング、ビオンの夢幻に相通じている。皮膚機能は実際の母親との接触を通して獲得され、この機能の内在化によって心に空間ができ、内的・外的空間の識別が可能になると考えた。これによって初めて、クラインが記述した投影同一化と摂取同一化が活発に行われる心的空間が成立する。しかし、母親の不充分な包容機能や乳児の破壊的な攻撃性によって、この皮膚機能が傷害される。この場合、乳児は心的空間の形成ができず、統合されないばらばらの自我のままで存在しなければならない。こうした状態は、自閉症児が光、臭い、水とか自分を包み込んでくれるものを必死に求めることを想起させる〜