うたた ka-gu’s diary

障がいをお持ちの方の、生活と余暇支援を行っている・NPO法人うたたのブログです

Kさんの作品と、ある日のうたたね夕食と、 「過食費」と「深い癒し」 水島 広子 より


 今日の夜勤明け、掃除機をかけていたら、日中一時のスペースで発見!しました。
Kさんの作品に、誰かが目玉をつけたようですね(笑)
 ノアの箱舟のようです。


 昨日の夕食の写真です。
好き嫌いの多い方がおられるので、何を食べたか教えて欲しいと言われていたので、報告がてら写した写真です。
 結局、皆さん全量摂取されました!と直ぐに報告させていただきました。
お昼がふりかけご飯だけというのがあるので、そんな日は、夕食と朝食に職員のみなさん気をつけてくれています。
 急に好き嫌いがなおったり、始まったり.......。原因があるのでしょうが、分からない時もあります。


 支援について、職員さんと、親分と今日少し話し合いました。
その時に思い出した文章をアップさせていただきました。岩崎学術出版社さんの学術通信からです。
 中井久夫先生も誉めておられた、水島広子先生の本の紹介です。
サリヴァンの名前が出てきています。対人関係論ですね!

 親分とは、自分が支援をさせていただく時には、ギターで伴奏する時に、歌っている方が気持ちよく歌えるように、その方にあったリズム・テンポとコードボイシング(これは特に考えます)を考えていきます。
 現場での支援も同じようにと話していたら、親分がそういう説明のほうが分かりやすい!というので、ボイシングについて語りだしたら分からん(笑)結局、音楽も福祉もおんなじことをやっているのですが.....と思いました(笑)

 基本的には、オペラント化と、転移を上手く解釈して抵抗を減らしてを繰り返して行くしかないのかな?と今は思って支援させていただいています。

学術通信
IWASAKI ACADEMIC PUBLISHER NEWS
NO. 95
2010=春


 「過食費」と「深い癒し」 水島 広子 

近著「摂食障害の不安に向き合う―対人関係療法によるアプローチ」を読んだ方から,「過食のお金や,アルバイトをした場合の収入の扱いなど,ずいぶん現実的なことを細かく扱っているので驚いた」という感想をいただいた。その感想を聞いて思い出したのが,米国では, 対人関係療法(interpersonalpsychotherapy: IPT)が,精神科医臨床心理士だけでなく,ソーシャルワーカーの方たちに多く活用されているという事実である。ソーシャルワークとIPT のアプローチに共通点が多いからだということを,IPT 創始者ワイスマンに聞いたことがある。患者の現在の対人関係と症状の関連に焦点を当てるIPT では,治療の過程で,様々な現実的な問題が解決することも多いし,ソーシャルサポートの量的・質的充実も重要な治療目標の一つである。これは,ソーシャルワークを専門とする人たちには,極めて親和性の高いアプローチだろう。
 振り返ってみれば,IPT が治療法として開発される際に多くを参考にしたサリバンは,当時圧倒的に優勢だった精神内界的アプローチとは異なり,「精神医学とは,人々についての,そして人々の間のプロセスについての科学的学問であり,心や社会や脳だけに焦点を当てるものではない」と教えた。この時点で,精神医学がソーシャルワーク的な領域に踏み出したと言える。そして,サリバンの考えは現在では多くの臨床現場に共有されていると思うし,ソーシャルワーカーの方たちの活躍の場が増えているのも,それが必要なことだと認識されているからだろう。
 一方で,こうした現実的なテーマを扱うと,単なるソーシャルワークになってしまい,「深い」治療にならないのではないか,と懸念する人々がいるのも事実である。もちろんそのリスクは否定しない。例えば,治療者側が一方的に問題解決をしてしまうようなやり方だと,治療
的なプロセスは進まないだろう。むしろ,患者の無能力感や依存心を増すだけかもしれない。要は,どういうスタンスで扱うかということだと思う。IPT の魅力は,現実的なテーマを通して患者の力動を扱えるところにあると私は思っている。そこで得られるものは,症状の寛解にとどまらない。ゆるし,深い癒し,患者や家族の人間的な成長に感動することも少なくなく,まさに精神療法に期待するものが得られるという印象がある。
 私が拙著に書いた一つの例は,過食症状を持つ摂食障害患者の場合に必ずといってよいほど問題になる過食費の話である。過食には膨大なお金がかかる。患者の多くは若年女性であり,とても自分でカバーできる金額ではないことが多い。一人で何とかしようとすると追い詰められて売春にすらつながり,家族に負担してもらうと,何らかの不和が生じることが多い。そういう意味では,明らかに現実的なテーマである。
 そのようなケースに対して,私は細々とした話を聞いて対応していくのだが,私が持っている明確な原則は,過食費は「家族が払うべき性質のもの」というものである。これは,摂食障害が病気であり,過食は症状であって本人のコントロール下にはないということを考えれば,
実は当然のことである(当然だと思わない方は拙著を読んでいただきたい)が,こうしたことを敢えて明確に形にすることは,大きな意味を持つ。患者の罪悪感を扱うことになるからである。
 過食をやめられない自分,家族が苦労して稼いでくれたお金で買った食べ物を嘔吐してただトイレに流す自分,そもそも経済的に自立できておらず家族にいつまでも苦労をかけている自分……お金についての罪悪感を持っていない過食患者を私は見たことがない。そしてその罪悪感が放置されることで,病気の経過はますます悪くなる。患者の罪悪感は明らかに治療で扱うべきものであるが,その有用な「とっかかり」が「お金」なのである。IPT の「医学モデル」を適用し,過食を病気の症状と位置づけた上で,患者の自立も視野に入れながらお金の流れを細かく規定していく作業は,様々な治療的プロセスを伴うものとなる。
 考えてみれば,「お金」は,私たちの生活の中で様々なものを象徴している。過食患者においては,「家族が苦労して稼いでくれたもの(家族との関係性)」であり,「自己コントロールの悪さの象徴(自分の性質)」であり,「経済的に自立していない,だめな自分を示すもの
(自分の能力,社会における位置づけ)」であり,「今後の生活の安定を脅かすもの(将来への不安)」である。「自己」「世界」「将来」という,悲観的認知の三徴のすべてがここに含まれているくらいに,私たちの精神生活の全域に及ぶものだと言える。これほどホットな領域を扱わない手はない,というのが私の考えであるし,患者の現在に密着するIPTでは扱わざるを得ない領域でもある。患者が実際に困っている領域を扱うことは,治療関係を強固にするし,患者の治療意欲も高める。そして結果としてソーシャルワーク的な側面も達成できるのであれば(IPT は治療であってソーシャルワークではないので,本当のソーシャルワークが必要になったときにはもちろんソーシャルワーカーを紹介する。ソーシャルワーカーの活用を考えるところまでが,IPT の守備範囲である),患者にとってそれほど「お得な」治療はないのではないだろうか。
 そして,「お金」というテーマのやりとりを通して,身近な他者との関係性の中で,罪悪感が扱われ,無力感が扱われ,将来への不安が扱われ,最終的には無条件の肯定的関心を感じることが,IPTで経験される深い癒しにつながっているのだと思う。そもそも,私たち人間が,細々とした現実的なことに従事しながら毎日を生きているのであり,私たちの心のあり方は,現実との関わり方に間違いなく反映されている。心に触れる治療を行うために,現実的なテーマを扱うことは,大変理にかなったことのように思える。
 
◇書評エッセンス◇
対人関係療法総合ガイド』 ワイスマン他著 水島広子
 海外でいくら評価が高くても,新しい精神療法を日本に導入するのはとても難しい。言葉の壁は厳然と存在するし,具体的な技法を
細かく理解して身につけていくのは並大抵のことではない。その精神療法について書かれた著作や論文を丁寧に読むのはもちろん大事だし,それを実践している人の話を直接聞いたり指導を受けたりすることも大切だ。
 『対人関係療法総合ガイド』を訳した水島広子先生は,対人関係療法について,そうした大変な作業を文字通り一人でやり続けている。それだけ臨床に根ざした活動をされているから,患者さんを救いたいという熱意があるから,これだけの活動を地道に続けられるのだと思う。
 うつ病はもちろんのこと,物質使用障害や不安障害,水島先生の専門の摂食障害など,多岐にわたる疾患に対する対人関係療法のアプローチが詳しく書かれていて,対人関係療法のエンサイクロペディア臨床版とも言える内容になっている。しかも,ふんだんに症例が紹介されていて,それを読むだけで精神療法の具体的な技法を勉強することができる・これは対人関係療法だけでなく,精神療法を勉強している人にも,すでに経験をつんだ人にも,きっと役に立つ内容になっている。(評者・大野裕=慶應義塾大学■精神療法35 巻5号(2009)より抜粋)

みずしま・ひろこ=精神医学,対人関係療法対人関係療法専門クリニック院長。著訳書に,ワイスマン他著『対人関係療法総合ガイド』(訳,岩崎学術出版社),『自分でできる対人関係療法』(創元社),『拒食症・過食症対人関係療法で治す』(紀伊國屋書店),『対人関係療法マスターブック』(金剛出版)など多数。このほど,『摂食障害の不安に向き合う―対人関係療法によるアプローチ』を刊行。